千年の杢−銘木でつくるお盆・トレー

ラウンドトレイ

丸盆−カタチの洗練

木のお盆は、浅盆と深盆に大別されます。浅盆は厚さ20ミリ前後で多目的トレーといってよいでしょう。深盆は、一般に湯呑みや急須などの茶器を載せたりする茶盆をいいます。もちろん2つの中間的な盆や、玄関や床の間におく飾り盆や、あぐら膳のような大盆もあります。

丸盆の主な形

丸盆を選ぶポイントの一つは、外縁部の形でしょう。お椀ほどではありませんが、さまざまな形状が轆轤挽きで自由自在に作られています。当工房で作る形は、長年のうちに成熟し、数種類の形に落ち着いています。私の場合、設計図面のような「型」はありませんので、すべて勘でカタチを決めてきました。

指に馴染む内隅のカーブ

最も多い形は、やはりシンプルなタイプです。WEBで観ているだけだと、素っ気なく物足りないと感じる人がいるかもしれません。しかし、盆というのは手にとって掴んだとき初めてその良さが分かるものです。WEBでは残念ながら無理ですが、親指が内側の隅に触れたときの馴染み具合を、同じ茶盆で比べてみてください。盆の内隅のカーブは、木地師によって微妙に違います。この部分への刃物の当て方はちょっとしたコツがあります。挽物というものは、アール(丸み)に挽き手の感性がでるのです。無神経なアールの盆は掴み心地がよくなく、気障りなものです。

深盆というと昔は深さ4センチぐらいの本当に深い盆もありましたが、最近は減りました。深さは変化しているとはいえこの基本形は、伝統に裏打ちされた形であり、飽きがきません。今後も生き続けていくでしょう。

丸盆の模式図

上縁部がやや開く端反り(はぞり)タイプは、華やかさや上品さがあります。これ以外にもさまざまな形状を試行錯誤してきましたが、私はこの形に洗練させてきたつもりです。主に直径1尺以上の盆に多く適用しますが、あまり挽かないので、この形を希望される場合はリクエストしてください。このカタチは将来移ろい変化していくかもしれません。

上縁部に盛線(ひも)をつけるタイプは伝統的なもので、近年挽くことがやや少なくなっています。

浅盆の縁の形は、モダンな感じの1種類に絞り込んできました。大抵は糸底をつけています。

切立という形は現在ほとんど挽きません。どうも木の温もりが伝わりにくいと感じるのは、このタイプのプラスチック製の盆が多いからでしょうか。これを希望される場合もリクエストしてください。

大盆の場合は、高台のような糸底をつけ、重厚な感じを出しています。1メートル前後のものはあぐら膳としても使えます。

実用性では尺一盆

伝統工芸の本などでは、尺二盆がちょうど肩幅に合い良いとする蘊蓄が出ています。確かに尺二盆でも良いのですが、使い勝手では尺一盆を私はお薦めしています。欅の深盆の場合、尺二盆は女性にはちょっと重すぎるようです。尺二は御膳なら運ぶのに良い幅であり、軽めの給仕用なら尺二盆でもよいような気がします。

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