千年の杢−茶入れ

茶入れ・棗

八角茶筒−平面と曲面の調和

3つの八角茶筒左から黒柿、花梨、欅

1994年の日本挽物展で、2つの茶入れを出品しました。その1つが、八角茶入れの原型です。小さな空間での平面と曲面の調和を意図しました。当時の出品作に比べ、現在販売しているものは、外蓋をつまみやすくし、内蓋の支えを蓋側で持たせるなど一部変更を加え、完成度を高めています。

木工ろくろや木工旋盤を始めた人は、何年かすると必ず、丸い作品の制作に飽きてしまう時期があります。変化のある創作がしたくなるのです。「真円の呪縛」から逃れる、といっていいかもしれません。私が、丸くない作品に挑戦したのは、この八角茶入れが初めてでした。八角は、縁起が良いことから古くから意匠はあり、決して目新しいものではありません。しかし、私にとっては新しい境地を開く作品となりました。

一木で作るこだわり

八角茶入れの味わい深さは、手にした時、8つのエッジが手のひらに心地よくかかることでしょう。円柱形の茶筒にはない感触です。そして、8つの側面には木目がしっかりと浮かび上がります。

八角茶筒

八角茶筒というと、一般に指物や樺細工がよく知られています。外と内と板を張り合わせて作ってあります。当工房の八角茶筒(茶入れ)は、一木から成形するところに技の見どころがあり、木地師としてのこだわりがあります。外ぶた内ぶたともろくろ仕上げです。ボトルタイプであることから、茶筒とは呼ばず八角茶入れと名付けています。

この茶入れは煎茶または番茶用です。茶筒と違い、茶葉は多く入りません。なお、白木地なので木地は呼吸しており、完全な気密を保証するものではありません。長期保存には向いていません。茶入れとはいうものの、木製容器として使われてもよいでしょう。

なお、注文いただいても合口の調整などで1、2日時間をいただく場合があります。

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