- 神代欅じんだいけやき
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太古から土に埋まっていた木を「神代木」といいます。いわゆる埋もれ木です。ふつう千年以上埋もれていたというのが目安です。千年までいかないものは、「半神代」などと表現しています。
数奇な運命
神代木は数奇な運命の材です。多くは道路建設や河川改修などの工事の際に出土します。わざわざ神代木を掘るという話は耳にしたことがありません。本来ならそのまま埋もれて幾千万年後には土へと還るであろうものが、人間の手による開発の代償のような形で世に現れるわけです。高度成長期からずいぶんと出土するようになりました。何とも皮肉な感じの材といえましょう。
じんだい。太古のロマンを感じさせる言葉の響きがあります。人を魅了するのは、やはり色でしょう。わさび色というか、鈍いからし色というか、やや灰味がかった色は、人工の塗りでは作り出せない微妙な色合いです。埋もれていた時の土の成分や水分量なども影響しているのでしょう。しかし、その色は空気中に出てからどんどん変化します。これは良い渋い色だと思っていても、その状態でとどまっていることは希です。まさに色がさめていくのですが、それはそれで味わいや面白みがあるのです。もともと移ろう宿命の木なのかもしれません。
評価は慎重に
神代はもともと含水率が高いものが多いようです。乾燥に時間がかかり、その過程で動きやすく歪みやすいのが難点です。ただ、欅特有の匂いがあまりしないのが特徴で、白木のままではふた物向きです。漆を塗ると、微妙な色が分からなくなります。
神代欅に希少価値を見いだす人が少なくありませんが、私は過小評価も過大評価もしないよう心掛けています。全国各地に土器が出るように、開発が進めば進むほど神代木というのは出てくるでしょう。プロが集まる材木市場では、欅玉杢や黒柿までの注目はなく、神代っぽいというだけの欅はごく普通の取引です。いくら神代でも木自体の樹齢や木目という点を見ておかないと、価値を見誤ることになります。
神代欅は、水に濡らすと白っぽくなります。手入れには注意が必要です。
神代には、神代杉や神代栗、神代楢などもあります
なお、埋もれ木と神代木と違うものとしてとらえる解釈があります。それによると、埋もれ木とは500万年の前の水成岩層に埋もれていたもので、宮城県の工芸品といいます。