- 梅うめ …… Japanese Apricot
紅梅と白梅があります。紅梅の方が材の色味があり、好まれますが希少です。天神さまの彫刻の材などに特に珍重されます。ただ、桜と違い、大きな木は少なく、虫もつきやすいものです。
材そのものは緻密で、木の匂いはあまりしません。茶筒や香合などに加工します。
[データ]バラ科。広葉樹。落葉小高木。散孔材。気乾比重0.81。
- 桜さくら …… Cherry Tree
主に山桜を使います。木目はあまりありません。ソメイヨシノやヒガンザクラは、あまり使われません。桜の樹皮は硬く趣があり、樺細工という工芸があります。
[データ]バラ科。広葉樹。落葉高木。関東以西の本州・四国・九州に分布。散孔材。気乾比重0.48-0.74(平均0.62)。
- 南天なんてん …… Nandin
南天の原木
究極の希少材です。南天の枝は通常径1〜2センチですが、まれに数センチに成長するものがあります。木口にみられる年輪はかすかにしか見えず、むしろ放射上に描かれる模様が類例のない美しさを放ちます。樹皮をそのまま生かし、漆を拭いて仕上げます。
茶入れや棗、アクセサリーに加工しますが、樹皮がはがれたり、木口に傷が入ったり大変難の多い材です。
白南天と赤南天がありますが、材はあまり違わないようです。
難転とあてて「難を転じる」の意に解釈される縁起木です。
東京・葛飾の柴又帝釈天にある南天床柱が、推定樹齢1500年で日本一と言われています。(植物学者の故牧野富太郎博士による)。大客殿頂経の間に床柱となっていますが、昔は近江の伊吹山麓にあったものといいます。もしも輪切りにしたらどんな模様が表れるのでしょうか。京都の金閣寺にも南天の床柱があり有名です。
[データ]メギ科。広葉樹。常緑低木。関東以西の本州・四国・九州に分布。散孔材。気乾比重0.48-0.74(平均0.62)。
- 蔦つた …… Ivy
金輪寺茶入れ(5012)
77mm×85mm希少素材です。柔らかいため、必ず漆を拭きます。これで作った金輪寺茶器は、歴史的な由緒や、木工家黒田辰秋さんが注目したことで有名になりました。その経緯は、白洲正子さんが詳しく記しています(『黒田辰秋−人と作品』)。黒田さんは金輪寺茶器をつくるための太い蔦に30年かけてめぐり会うのですが、これは富山県の庄川の山奥にあったと言われています。それに関わった人と、私自身が付き合いがあったこともあり不思議な縁を感じます。
金輪寺茶器はそのころから一時脚光を浴び、市販されるようになったのですが、実は太い蔦そのものはそう珍しいわけではないことが分かってきました。自然の輪郭を残しながら木口面を生かした香合の方が、蔦の面白さがよく出ていると私は思います。
木口面には線香花火のような美しい放射模様が表れる場合があります。これは、つる性植物に特有の巻きひげの根っこ部分にあたるものです。
[データ]ブドウ科。広葉樹。落葉つる性樹。ナツヅタ。